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Ledger(レジャー)とは?Nano・Stax・Recover論争までハードウェアウォレット最大手をわかりやすく解説

結論から:Ledger(レジャー)は、2014年にフランス・パリで設立されたハードウェアウォレットの世界最大手です。「Nano S」(2016年)から「Stax」「Flex」(2024年)、「Nano Gen5」(2025年)まで製品を展開し、2021年には3億8,000万ドルを調達して企業評価額約15億ドルのユニコーン企業になりました。2020年に顧客の個人情報流出、2023年に「Ledger Recover」を巡る論争を経験しましたが、実際の利用でデバイス本体の秘密鍵が破られて資産が盗まれた事例は確認されていません(2026年7月時点。研究者による物理アクセス前提の攻撃デモは過去に存在し、修正されています)。
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 社名 | Ledger SAS |
| 設立 | 2014年(フランス・パリ) |
| 創業 | BTChip、La Maison du Bitcoinなど仏スタートアップの技術者ら8人が合流(Eric Larchevêque氏、Nicolas Bacca氏ら) |
| CEO | Pascal Gauthier(パスカル・ゴティエ) |
| 本社 | フランス・パリ |
| 上場区分 | 非上場(評価額約15億ドルのユニコーン・2021年時点) |
| 主力事業 | ハードウェアウォレットの開発・販売、管理アプリLedger Live、法人向けカストディ技術 |
この記事のポイント
- 2014年パリ設立。「セキュアエレメント」チップ搭載ウォレットのパイオニアで世界最大手
- 2020年の情報流出は「ネットショップの顧客情報」であり、デバイスの鍵は破られていない
- 2023年のLedger Recover論争は「任意加入のオプション」を巡る信頼問題だった
- 2021年シリーズCで3.8億ドル調達、評価額約15億ドル
- 中古・非正規ルートでの購入は絶対NG。詐欺デバイスの実例がある
歩んできた道(歴史)
2014〜2019年:セキュアエレメントで市場を切り開く
Ledgerは2014年、スマートカード(ICカード)セキュリティの専門家たちがパリで設立しました。特徴は、クレジットカードのICチップと同等の耐タンパー性を持つ「セキュアエレメント」に秘密鍵(暗号資産の所有権を証明する鍵。基礎は公開鍵と秘密鍵)を隔離する設計です。2016年6月にUSB型の「Nano S」を発売してヒットさせ、2018年に管理アプリ「Ledger Live」を公開。2019年にはBluetooth対応の「Nano X」を発売し、同年Pascal Gauthier氏がCEOに就任しました。
2020年:顧客情報の大量流出 — ただしデバイスは無事
2020年7月、LedgerのECサイト関連データベースが不正アクセスを受け、約100万件のメールアドレスと、約27万2,000件の氏名・住所・電話番号が流出しました。同年12月にはこのデータがネット上に公開され、被害者を狙ったフィッシングメール、SIMスワップ、さらには「交換用」と称した改造偽デバイスを郵送する詐欺まで発生しました。ここで重要なのは、流出したのはネットショップの顧客情報であり、デバイス本体やセキュアエレメント内の秘密鍵は一切破られていないという点です。とはいえ「住所を知られたハードウォレット保有者」が生まれたことの影響は大きく、自宅保管者への脅迫的フィッシングは長期間続きました。
2021〜2022年:ユニコーン化と製品拡充
2021年6月、10T Holdings主導のシリーズCで3億8,000万ドルを調達し、評価額は約15億ドルに。2022年4月に「Nano S Plus」を発売し、同年12月にはiPodの生みの親Tony Fadell氏がデザインした曲面E Ink画面の「Stax」を発表しました(出荷は遅延し2024年5月開始。価格は279ドルから399ドルに引き上げ)。
2023年:Ledger Recover論争とConnect Kit事件
2023年5月、シードフレーズ(ウォレット復元用の秘密の単語列)を暗号化して3分割し、Ledger・Coincover・EscrowTechの3社に分散保管する有料サービス「Ledger Recover」を発表すると、大きな反発が起きました。サービス自体は任意加入(オプトイン)で、加入しなければ鍵が端末外に出ることはありません。しかし「ファームウェアが技術的にはシードを外部に出せる設計だった」という事実が、「ハードウェアウォレットの鍵は絶対に外に出ない」と信じてきたユーザーの信頼を揺るがしたのです。Ledgerはロールアウトの延期と関連コードのオープンソース化で対応し、同年10月にサービスを開始しました。「自己管理の純度」と「シード紛失リスクの救済」のどちらを取るかという、業界全体に残る論点です。
さらに2023年12月14日には、退職者のnpmアカウント乗っ取りにより、外部dAppが使うソフトウェア部品「Ledger Connect Kit」に悪性コードが混入するサプライチェーン攻撃が発生。悪意ある取引に署名してしまった利用者から約61万ドル相当が流出しました(Ledger発表)。この事件でもデバイス自体は侵害されていませんが、「ハードウォレットがあっても、悪い取引に署名すれば資産は失われる」という教訓を残しました。
2024〜2025年:Flex、そしてNano Gen5へ
2024年7月26日にタッチ画面搭載の中位機「Flex」(249ドル)を発売。2025年10月23日には定番Nanoシリーズを刷新した「Nano Gen5」(179ドル・タッチ画面/Bluetooth/NFC対応)を発売しました。
事業・サービス
- ハードウェアウォレット販売:Nano S Plus / Nano X / Flex / Stax / Nano Gen5(2026年7月時点の主なラインアップ。初代Nano Sは販売終了)
- Ledger Live:資産管理・送受信・ステーキングなどを行う公式アプリ。提携サービス経由の購入・交換手数料が収益源の一つ
- Ledger Recover:任意加入の有料シード復元サービス
- 法人向け:機関投資家向けカストディ技術(Ledger Enterprise)
日本のユーザーとの接点
Ledgerは取引所ではなく「自分で鍵を保管するための道具」のメーカーなので、金融庁の暗号資産交換業登録の対象外です。日本からは公式サイトまたは正規代理店で購入でき、Ledger Liveは日本語に対応しています。国内取引所で購入した資産のうち、長期保有分や大きな金額をハードウェアウォレットへ移す、という併用が現実的な使い方です。移す際は送金ミスを防ぐ手順を必ず確認してください。
リスク・注意点
- 中古・フリマ・非正規出品は絶対に買わない:「リカバリーフレーズが最初から印字されている」「開封済み」のデバイスは詐欺です。2020年流出後には改造デバイスの郵送詐欺も実際に起きました。必ず公式サイトか正規代理店で新品を購入してください。
- Ledgerを名乗る連絡は疑う:2020年の流出以降、Ledgerを騙るフィッシングが定番化しています。メールやDMのリンクからLedger Liveを更新しない、シードフレーズをどこにも入力しない、が鉄則です(詐欺対策ガイド)。
- Recoverは任意:使わない選択が可能です。使う場合は、本人確認情報の提出と引き換えに紛失リスクを減らすというトレードオフを理解してから判断しましょう。
- 署名の中身を確認する:Connect Kit事件が示した通り、デバイスがあっても悪意ある取引への署名は防げません。表示内容を確認できない「ブラインド署名」は避ける設定にしてください。
- 本記事は情報提供であり、特定製品の購入や暗号資産投資を推奨するものではありません。
まとめ
Ledgerは、失敗や論争を含めて情報開示を続けながら、10年以上「デバイスの鍵は破られていない」実績を保ってきた企業です。ただしハードウェアウォレットは「正しく買い、正しく使って」初めて安全になります。導入手順はハードウェアウォレットの設定ガイド、フィッシング対策は詐欺対策ガイド、送金時の確認は送金の安全手順にまとめています。自己管理の全体像はセキュリティトピックハブからどうぞ。
投資にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。暗号資産は価格変動やハッキング、紛失等のリスクがあります。投資判断はご自身の責任で、余裕資金の範囲で行ってください。税制・規制は変更される場合があるため、最新情報は必ず公式の一次情報をご確認ください。
Sources
- Ledger raises $380 million for its crypto hardware wallet(TechCrunch, 2021-06-10)
- Crypto firm Ledger hikes price of Stax crypto wallet, launches Flex(CNBC, 2024-07-26)
- Ledger launches Ledger Flex, a mid-range hardware crypto wallet(TechCrunch, 2024-07-26)
- Introducing Ledger Nano Gen5(Ledger公式, 2025-10)
- What happened in the Ledger data breach?(Twingate)
- Ledger Connect Kit Hack: Retrospective(Revoke.cash, 2023-12)
本記事は情報提供のみを目的とし、投資・金融・取引の助言ではありません。価格は参考値で古い場合があります。投資判断はご自身の責任で。