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暗号資産の譲渡は消費税非課税|法人の課税売上割合はいつから変わる?

結論:非課税は変わらないが、「課税売上割合」の計算方法が変わる
法人が保有する暗号資産を暗号資産交換業者を通じて譲渡した場合、消費税は現在も非課税です。この非課税自体は、令和8年度税制改正が実施された後も変わりません。変わるのは、消費税の仕入税額控除に使う「課税売上割合」の計算方法です。現行制度では暗号資産の譲渡は課税売上割合の分母にも算入されませんが、金商法(金融商品取引法)への移行が施行された後は、有価証券の譲渡と同じ扱いになり、譲渡対価の5%相当額を分母に算入することになります。暗号資産の売買額が大きい法人ほど、課税売上割合が下がり、仕入税額控除に影響する可能性があります。
この記事のポイント
- 暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡は、現在も消費税は非課税(消費税法上「支払手段に類するもの」の譲渡に該当)
- 現行制度では、この非課税売上高は課税売上割合の計算(分母)にも算入しない
- 令和8年度税制改正大綱により、暗号資産の位置づけは「有価証券に類するもの」に変わり、譲渡対価の5%相当額を課税売上割合の分母に算入する見直しが決まった
- 適用は金商法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日から。施行日自体は本稿執筆時点で未定(早ければ2028年という見方が専門家から出ている)
- 個別対応方式を採用し、暗号資産の売買額が大きい法人ほど影響が大きくなり得る
現行制度:暗号資産の譲渡は消費税非課税、課税売上割合にも影響しない
国内の暗号資産交換業者を通じて暗号資産を譲渡した場合、消費税法上「支払手段及びこれに類するもの」の譲渡に該当し、消費税は非課税です(消費税法別表第二・二号)。これは法定通貨の両替や小切手の譲渡などと同じ扱いで、暗号資産を「モノ」ではなく「支払いの手段」として位置づけているためです。
さらに重要なのは、消費税の確定申告を一般課税(個別対応方式・一括比例配分方式)で行う場合に計算する「課税売上割合」(仕入税額控除の計算に使う割合)です。国税庁のFAQによれば、暗号資産の譲渡は非課税取引ではあるものの、課税売上割合の算出にあたって非課税売上高に含めて計算する必要はないとされています。つまり現行制度では、暗号資産をどれだけ大量に売買しても、課税売上割合の分母にはまったく影響しません(消費税法施行令9条④・48条②)。これは、通常の非課税売上(土地の譲渡や利子など)が分母に算入されて割合を押し下げるのとは異なる、暗号資産特有の扱いです。
何が変わるのか:「支払手段」から「有価証券に類するもの」への位置づけ変更
令和8年度税制改正大綱(自由民主党・日本維新の会が2025年12月19日に公表、同12月26日に閣議決定)では、暗号資産の消費税の非課税規定について、位置づけを次のように変更する方針が示されました。
暗号資産の譲渡を有価証券に類するもの(現行:支払手段に類するもの)の譲渡として、引き続き消費税を非課税とする。
これは、暗号資産の法的な枠組みを資金決済法から金融商品取引法(金商法)へ移す制度改正と連動する変更です。暗号資産が株式や投資信託と同様に「金融商品」として整理されることに伴い、消費税上も「支払いの手段」ではなく「有価証券に類するもの」として扱う方が実態に合う、という考え方です。非課税であること自体は維持されるため、暗号資産の譲渡に消費税が新たにかかるようになるわけではありません。
課税売上割合の計算にどう影響するか
問題は、有価証券に類するものの譲渡に切り替わることで、課税売上割合の計算ルールも有価証券と同じものが適用される点です。大綱では次のように定められています。
消費税の課税売上割合の計算上、暗号資産の譲渡については、その譲渡に係る対価の額の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額に算入する。
有価証券の譲渡は、消費税法施行令上、譲渡対価の全額ではなく5%相当額だけを課税売上割合の分母に加える扱いになっています(売買額をそのまま分母に入れると、証券取引を行う事業者の割合が実態とかけ離れて低下してしまうための調整措置です)。暗号資産もこれと同じ5%ルールの対象になる、というのが今回の見直しです。
現行制度の「まったく算入しない」から「5%だけ算入する」への変更なので、一見小さな差に見えます。しかし暗号資産の売買代金は、決済用途の少額取引から法人のトレーディングまで金額の規模が大きくなりやすく、他の課税売上高に対して暗号資産の譲渡対価総額が大きい法人ほど、分母(資産の譲渡等の対価の額)が増えて課税売上割合が下がり、個別対応方式で控除できる課税仕入れの範囲が狭まる可能性があります。影響の大きさは会社ごとの取引規模次第で、一律の数字はありません。
| 項目 | 現行制度 | 改正後(金商法改正法施行の翌年1月1日〜) |
|---|---|---|
| 消費税の根拠区分 | 支払手段に類するものの譲渡 | 有価証券に類するものの譲渡 |
| 譲渡自体の課税関係 | 非課税 | 非課税(変更なし) |
| 課税売上割合の分母への算入 | 算入しない | 譲渡対価の5%相当額を算入 |
| 対象 | 暗号資産交換業者を通じた譲渡等 | 同左(詳細は今後の政省令等で確定) |
適用はいつから?
まだ「大綱」段階。適用は先の話
大綱では「上記の改正は、金融商品取引法の改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日以後に行われる暗号資産の譲渡等について適用する」とされています。金商法改正法自体の施行日は本稿執筆時点(2026年7月)で確定していません。分離課税と同じく、金商法改正の施行スケジュールに連動する仕組みで、専門家の間では早ければ2028年からとの見方がありますが、確定ではありません。実務対応は金融庁・国税庁の続報を必ず確認してください。
つまり、今の決算・申告では現行ルール(非課税・分母に算入しない)のままで問題ありません。改正が適用されるのは、金商法改正法が施行されてからさらに翌年1月1日以降の譲渡分からです。
法人が今からできる準備
- 暗号資産の売買規模を把握する:他の課税売上高と比べて暗号資産の譲渡対価総額がどの程度の規模になるか、社内で概算しておく。
- 仕入税額控除の方式を確認する:個別対応方式・一括比例配分方式のどちらを採用しているかで影響の出方が変わる。個別対応方式であれば、課税仕入れの用途区分(課税売上対応・非課税売上対応・共通対応)の整理状況も見直しておく。
- 続報を一次情報で追う:適用開始は金商法改正法の施行日に連動するため、金融庁・国税庁の公式発表、および毎年の税制改正法案の国会審議の進み方を確認する。
- 顧問税理士に相談する:課税売上割合の低下が仕入税額控除にどの程度影響するかは会社の取引構成次第のため、個別の試算は税理士に依頼するのが確実。
暗号資産の税金全体の仕組みは暗号資産の税金(日本)|基本の考え方、令和8年度税制改正の全体像は暗号資産の税制改正2026をわかりやすくも参考にしてください。
よくある質問
Q. 個人事業主や個人投資家にも関係がある? A. 課税売上割合は消費税の課税事業者(法人・一部の個人事業者)が一般課税で申告する際に使う指標です。消費税の課税事業者でない個人投資家には直接関係しません。事業として暗号資産取引を行い、一般課税で申告している法人・個人事業者が対象です。
Q. 暗号資産の譲渡に消費税がかかるようになる? A. いいえ。今回の見直し後も暗号資産の譲渡そのものは非課税のままです。変わるのは、課税売上割合という別の計算に暗号資産の譲渡対価の5%相当額が算入される点だけです。
Q. この改正はもう法律として決まった? A. 令和8年度税制改正大綱(2025年12月)で示された政府・与党の方針です。今後、税制改正法案としての国会審議・成立を経て、さらに金商法改正法の施行日翌年1月1日から実際に適用される、という段階を踏みます。現時点では正式な施行前の見直し内容として理解してください。
参考・出典
- 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」6-1 暗号資産を譲渡した場合の消費税(令和7年12月26日改訂): https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/virtual_currency_faq_03.pdf
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)暗号資産に係る課税関係の見直し: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_04.htm
- 大和総研「暗号資産取引に20%の申告分離課税導入へ」(2026年2月6日): https://www.dir.co.jp/report/research/law-research/tax/20260206_025575.html
投資にあたっての注意
本記事は情報提供を目的としたものであり、投資助言ではありません。暗号資産は価格変動やハッキング等のリスクがあります。投資判断はご自身の責任で、余裕資金の範囲で行ってください。
Sources
FAQ
- 個人事業主や個人投資家にも関係がある?
- 課税売上割合は消費税の課税事業者が一般課税で申告する際に使う指標です。消費税の課税事業者でない個人投資家には直接関係しません。事業として暗号資産取引を行い、一般課税で申告している法人・個人事業者が対象です。
- 暗号資産の譲渡に消費税がかかるようになる?
- いいえ。見直し後も暗号資産の譲渡そのものは非課税のままです。変わるのは課税売上割合という別の計算に、譲渡対価の5%相当額が算入される点だけです。
- この改正はもう法律として決まった?
- 令和8年度税制改正大綱(2025年12月)で示された政府・与党の方針です。今後の税制改正法案の国会審議・成立を経て、さらに金商法改正法の施行日翌年1月1日から実際に適用される段階を踏みます。
本記事は情報提供のみを目的とし、投資・金融・取引の助言ではありません。価格は参考値で古い場合があります。投資判断はご自身の責任で。